
Fromシンヤ(男女のパートナーシップ研究所)
「付き合っていた頃は、もっと色々してくれたのに。」
結婚生活が長くなると、こんな不満が出てくることがあります。
付き合っていた頃は、仕事で疲れていても会いに来てくれた。
休日にはデートの計画を立ててくれたし、こちらの話もじっくり聞いてくれた。
でも結婚してからは、休日は家でゴロゴロしていることが増え、話しかけてもスマホを見ながら生返事。
女性だけでなく、男性側からも似たような不満を聞くことがあります。
「昔はもっと甘えてくれたのに、結婚してからは冷たくなった。」
「付き合っていた頃は、もっとスキンシップがあったのに。」
こういう変化を見ると、つい、
「結婚したら、もう努力する必要がないと思っているの?」
「昔はできていたんだから、今だってできるはずでしょ?」
と考えてしまいます。
でも実は、付き合っていた頃にできたことが結婚後にできなくなるのには、いくつかの理由があります。
必ずしも、愛情が冷めたからとは限らないのです。
付き合っていた頃は、相手と会うことが特別なイベントだった
交際中と結婚後の大きな違いの一つは、相手と過ごす時間の位置づけです。
付き合っていた頃は、基本的に別々の生活をしています。
仕事が終わってから会いに行く。
休日にデートをする。
そのために、あらかじめ時間を確保します。
多少疲れていても、「今日は恋人に会えるから頑張ろう」と思えることもあります。
ところが結婚すると、相手と一緒にいることが日常になります。
毎日顔を合わせるので、わざわざ時間を確保しなくても、一緒にいる時間はあります。
でも、ここに落とし穴があります。
「同じ家にいること」と「相手に関心を向けて過ごすこと」は、別だからです。
付き合っていた頃は、デート中の数時間を相手のために使っていた人でも、結婚後は同じ部屋にいながら、それぞれ別のことをしている時間が増えるかもしれません。
本人としては、毎日一緒にいるので十分に時間を共有しているつもりです。
でも相手からすると、「一緒にいるのに、全然かまってくれなくなった」と感じることがあります。
同じ時間を過ごしていても、2人が感じている距離感は違うことがあるのです。
結婚後は、恋愛以外のことにもエネルギーを使う。
もう一つ大きな違いは、生活の負担です。
付き合っていた頃は、お互いに自分の生活を管理していればよかったものが、結婚後は2人の生活を維持する必要が出てきます。
家事の分担やお金の管理など、考えなければならないことが増えます。
子どもが生まれれば、さらに状況は変わります。
2022年に発表された、49件の研究をまとめたメタ分析では、第一子の誕生後、男女ともに夫婦関係への満足度が低下する傾向が確認されています。
もちろん、すべての夫婦がそうなるわけではありません。
ただ、育児によって生活が大きく変わることが、夫婦関係にも影響することは研究でも示されているのです。
例えば、付き合っていた頃は毎週末デートに出かけていた夫婦でも、子どもが生まれると、休日はたまった家事を片づけるだけで終わってしまうかもしれません。
そんな中で、相手が「たまにはデートしたい」と言っても、
「そんな余裕ないよ。」
と感じることもあるでしょう。
これは男女どちらにも起こります。
以前と同じ行動ができなくなったとしても、以前と同じだけの時間や体力が残っているとは限らないのです。
安心できる相手だからこそ、頑張らなくなることもある
付き合っていた頃は、相手から好かれたいという気持ちが、行動の大きな動機になります。
嫌われたくないので、言葉遣いに気をつけたり、相手の好みに合わせたりします。
多少面倒だと感じることでも、頑張れることがあります。
でも結婚して、お互いの存在が当たり前になると、そうした緊張感は少しずつ薄れていきます。
これは、必ずしも悪いことではありません。
相手の前で無理をせず、自然体で過ごせるようになったとも考えられます。
ただし、本人にとっては「気を遣わなくても安心できる関係」になったつもりでも、相手にとっては「自分への扱いが雑になった」と感じられる場合があります。
ここで問題になるのは、安心すること自体ではなく、相手への気遣いまで減ってしまうことです。
例えば、付き合っていた頃は相手が疲れていると気づいて声をかけていたのに、結婚後は「疲れているのはお互い様」と思って何も言わなくなる。
相手が喜ぶことをしなくなったというより、そもそも相手の反応を以前ほど気にしなくなっているのかもしれません。
この変化に本人が気づいていないケースもあります。
特に男性の場合は無意識レベルで、「身内に対しては気にかけないことが、信頼の証になる」と考える傾向があります。
この傾向は、女性とは真逆です。
女性は、「身内だからこそ、気にかける」という考え方です。
この違いが、日常生活の中ですれ違いや不満を生んでいくことがあります。
「前はできたのに、なぜ今はできないの?」がすれ違いを生む
ここで気をつけたいのが、過去の行動を基準にして、現在の相手を判断してしまうことです。
「前はできたんだから、今できないのは努力不足だ。」
という考え方ですね。
もちろん、実際に相手への関心が薄れてしまっている場合もあるでしょう。
一方で、本当に余裕がなくてできなくなっている可能性もあります。
この2つを区別しないまま、「昔みたいにしてよ」と求め続けると、言われた側も苦しくなってしまいます。
「仕事も家のことも頑張っているのに、まだ足りないの?」
そんな気持ちになるかもしれません。
反対に、求めている側にも、
「そんなに無理なことをお願いしているつもりはないのに。」
という気持ちがあります。
どちらも自分の立場から考えると、相手が分かってくれないように感じてしまうのです。
昔と同じことができなくても、今できることはある
では、結婚後にこうした変化が起きた時、どうすればいいのでしょうか?
僕は、付き合っていた頃とまったく同じことを再現する必要はないと思っています。
例えば、以前は毎週末デートしていたけれど、今はそんな時間が取れないのであれば、月に一度だけでも2人で出かける時間を作ってみる。
長時間話を聞く余裕がないのであれば、寝る前の10分だけ、スマホを置いてお互いの話をする。
スキンシップについても、以前と同じ頻度を目指すのではなく、今の2人にとって心地よい触れ合い方を相談してみる。
こうした小さな変更でも、相手の受け取り方は変わるかもしれません。
アメリカの心理学者アーサー・アロンらが2000年に発表した研究では、カップルが一緒に新鮮で刺激のある活動をすることと、関係への満足度との関連が報告されています。
実験でも、普段とは違う活動を一緒に行ったカップルに、関係の評価が改善する傾向が見られました。
結婚後だからといって、2人の関係に新しい楽しみを作れなくなるわけではないのです。
ただし、ここで忘れたくないのは、相手に合わせるために自分ばかりが頑張る必要はないということです。
「昔みたいにしてほしい」と思う側も、「今はそんな余裕がない」と思う側も、どちらの気持ちも話してみる。
その上で、今の生活の中で何ならできそうかを、一緒に考えてみるといいと思います。
付き合っていた頃と結婚後では、生活も、使える時間も変わっています。
それでも、相手が喜ぶことをしたいと思う気持ちまで、なくす必要はありません。
昔と同じことはできなくても、今の2人だからできることもあるはずです。
まずは、「昔はできたのに」と責める前に、今は何が難しくなっているのかを聞いてみるところから始めてみてはいかがでしょうか?
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