【相手が感情的になった時、「落ち着いて」が逆効果になる理由】

 Fromシンヤ(男女のパートナーシップ研究所)

夫婦で話している時、相手が急に感情的になることがあります。

声が大きくなったり、泣き始めたり、同じことを何度も訴えてきたりすると、聞いている側も困ってしまいます。

そんな時、つい言いたくなるのが、

「ちょっと落ち着いて。」

という一言です。

言っている側としては、ケンカを大きくしたいわけではありません。

むしろ、「このままだと話し合いにならないから、いったん冷静になってほしい」という気持ちで言っていることが多いと思います。

でも、この「落ち着いて」は、相手の感情が高ぶっている時ほど逆効果になることがあります。

「落ち着いて」が刺さるのは、気持ちを否定されたように聞こえるから

「落ち着いて」という言葉自体が悪いわけではありません。

問題は、相手がその言葉をどう受け取るかです。

たとえば、自分では「こんなに傷ついた」「こんなに腹が立った」と必死に伝えている時に、

「落ち着いて。」

と言われると、

「そんなに怒ることじゃない。」

「あなたは感情的すぎる。」

と言われたように感じることがあります。

本人は感情を分かってほしくて話しているのに、その感情そのものを止められたように感じるわけです。

すると、落ち着くどころか、

「なんで分かってくれないの!!」

となって、さらに声が大きくなることがあります。

2011年に発表された心理学研究でも、ストレスを感じている人に対して、「感情を否定するような反応」をした場合、「気持ちを受け止める反応」をした場合よりもネガティブな感情が強まり、心拍などの生理的な反応も高くなることが示されています。

相手を落ち着かせようとして言った言葉が、相手の身体をさらに興奮させてしまうことがあるわけです。

感情が高ぶっている時は、そもそも理屈が入りにくい

夫婦の話し合いでよく起こるのが、

「ちゃんと説明すれば分かってもらえるはず。」

と思って、感情的になっている相手に説明を続けてしまうことです。

でも、人は強いストレスを感じると、身体がいわゆる「闘うか逃げるか」の状態に近づきます。

夫婦研究で知られるジョン・ゴットマン博士は、こうした状態を「フラッディング(感情の洪水)」と呼んでいます。

心拍が上がり、身体が緊張している時には、相手の話を冷静に聞いたり、別の視点から考えたりすることが難しくなります。

この状態で、

「いや、でもそれは違うよ。」

「だからさっき説明したじゃん。」

と正論を重ねても、内容が届きにくいのです。

言っていることが正しいかどうかよりも、相手の身体がすでに「攻撃されている」「分かってもらえない」と反応していることの方が大きく影響します。

ゴットマン博士の研究では、こうした強い興奮状態から戻るには、少なくとも20分程度の休憩を取ることが勧められています。

その場で何とか決着をつけようとすると、話の内容よりも言い方や態度のケンカになってしまいやすいです。

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まずは感情を「止める」のではなく、「分かろうとする」

では、相手が感情的になった時にどうすればいいのか。

ひとつは、感情を止めようとする前に、その感情があることをいったん認めることです。

たとえば、

「それだけ嫌だったんだね。」

「かなり腹が立ってるんだね。」

くらいでも構いません。

ここで、相手の主張に100%賛成する必要はありません。

「あなたがそう感じたことは分かった。」

というところまで受け止めるだけです。

これは、相手の言っていることを全部認めることとは違います。

自分には自分の言い分があってもいいですし、相手の誤解を後から訂正してもいいです。

ただ、感情が一番高ぶっている時に訂正から入ると、相手には「また否定された」と聞こえやすくなります。

先に感情を受け止めて、少し落ち着いてから内容を話す方が、結果的には話し合いが短く済むこともあります。

話し合いを続けない方がいい時もある

もちろん、どんな時でも相手の感情を受け止め続ければいいわけではありません。

怒鳴る、威圧する、人格を否定するような言葉が続いているなら、そのまま会話を続ける必要はありません。

そんな時には、

「今のままだとお互いにキツい言い方になりそうだから、20分くらい休んでから話したい。」

と、自分から休憩を提案する方がいいこともあります。

ポイントは、「あなたが感情的だから話せない」と相手だけを問題にしないことです。

「お互いに落ち着いて話せる状態を作りたい」という形にすると、相手も拒絶された感じを持ちにくくなります。

休憩を取る場合には、「また後で話そう」だけで終わらせず、「21時になったら話そう」のように戻る時間を決めておくと、逃げられたと感じにくくなります。

人は「落ち着け」と言われるより、分かってもらえた時に落ち着きやすい

「落ち着いて」と言いたくなる時は、言う側もかなり疲れていることが多いです。

相手の感情を全部受け止めなければいけない、と考える必要はありません。

ただ、相手の感情が大きくなっている時に、いきなり感情を小さくさせようとすると、うまくいかないことがあります。

そんな時は、

「落ち着いて。」

を一度飲み込んで、

「そこまで嫌だったんだね。」

に変えてみる。

それだけで、相手の反応が少し変わることがあります。

夫婦の話し合いでは、何を言うかだけでなく、相手が今どんな状態なのかを見ることも必要です。

相手を無理に落ち着かせるより、落ち着けるやり取りに変えていく方が、結果として話が前に進みやすくなります。

 

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