【女性が「言わなくても分かってほしい」と思うのはなぜか】

 Fromシンヤ(男女のパートナーシップ研究所)

夫婦げんかの中で、こんなやり取りが起こることがあります。

妻「どうして私が言わないと、何もやってくれないの?」

夫「言ってくれればやるよ。何をしてほしいのか、ちゃんと言ってくれないと分からないよ。」

妻「そうじゃなくて、言わなくても気付いてほしいの!」

夫からすると、「言ってくれればやるのに、なぜ言ってくれないんだろう?」と不思議に感じるかもしれません。

一方、妻からすると、「どうして私がいちいち説明しなければいけないんだろう?」という不満があります。

この「言わなくても分かってほしい」という気持ちは、なぜ生まれるのでしょうか?

今回は、その背景にある心理を考えてみたいと思います。

役割分担制の男性 VS 集団で作業をする女性

この男女の考え方の違いを理解する上で、一つ参考になるのが、人類が狩猟採集生活を送っていた時代の話です。

狩猟採集社会では、男性が狩りを担当し、女性が植物などの採集や子育てを中心に担うという役割分担が、多くの社会で見られてきました。

狩りに出かける男性は、一人、あるいは少人数の仲間で行動することが多かったと言われています。

一方、女性は集団で採集に出かけたり、お互いに協力して子どもの面倒を見たりしていました。

アメリカの人類学者カレン・クレイマーは、2023年に発表した論文で、狩猟採集社会における女性同士の協力関係について詳しく紹介しています。

そこでは、女性たちが食料の調達や子育てなど、さまざまな場面で協力してきたことが報告されています。

こうした生活では、女性たちは自分の仕事だけでなく、周りの人が何をしているのか、誰が助けを必要としているのかにも目を向ける必要があったと考えられます。

一方、狩りでは、「自分に任された役割を果たす」ことが重要になる場面も多かったでしょう。

この違いを現代の夫婦生活に当てはめて考えると、ちょっと面白いことが見えてきます。

たとえば、夫婦で夕食の準備をしている時です。

夫が妻から「お皿を出して」と言われたら、お皿を出す。

夫としては、頼まれた仕事(役割)をきちんとやったつもりです。

ところが、妻はその後も料理を作りながら、テーブルを拭いたり、子どもの食事の準備をしたりしています。

そんな時、妻としては、

「お皿を出し終わったなら、他にもやることがないか見てほしい。」

「私が忙しそうにしているんだから、何か手伝えることはないか気付いてほしい。」

と感じることがあります。

夫の方は「自分の仕事は終わった」と考えているのに、妻の方は「まだみんなの仕事が終わっていない」と考えているわけです。

このような考え方の違いが、「言わなくても分かってほしい」という気持ちにつながっているのかもしれません。

ただし、ここで一つ注意したいのは、男性はみんな役割分担が得意で、女性はみんな集団で協力する本能があると、単純に決めつけることはできないという点です。

実際には女性が狩りをする社会もありますし、男性が集団で協力することも当然あります。

また、昔の生活の違いが、そのまま現代の男女の性質を100%決めているという証拠があるわけでもありません。

それでも、「自分に与えられた仕事を終わらせる」という考え方と、「周りの状況を見ながら協力し合う」という考え方の違いは、現代の夫婦関係を考える上でも参考になると思います。

そして、こうした違いに加えて、女性が「言わなくても分かってほしい」と感じる背景には、もう少し別の心理も関係しています。

「言わなくても分かってほしい」の裏には、「愛情を確認したい気持ち」がある

まず考えられるのは、「自分のことを気にかけてくれていると感じたい」という気持ちです。

たとえば、仕事や育児で疲れている時に、パートナーが何も言わずに家事を引き受けてくれたら、うれしく感じる人は多いと思います。

反対に、同じ家事をしてくれたとしても、

「やってほしいなら、ちゃんと言ってよ。」

と言われると、なんとなく寂しく感じることがあります。

家事をしてくれたという結果は同じなのに、なぜ感じ方が違うのでしょうか?

それは、求めているものが家事の手伝いだけではないからです。

「自分が疲れていることに気付いてくれた。」

「自分のことをちゃんと見てくれている。」

そう感じられること自体に、愛情を感じる人がいるのです。

心理学では、これに関係する概念として「知覚されたパートナーの応答性(Perceived Partner Responsiveness)」があります。

これは、自分の気持ちや欲求をパートナーが理解し、大事にしてくれていると感じられることです。

アメリカの心理学者ローレンソーらが1998年に発表した研究でも、相手が自分を理解し、気持ちに応えてくれていると感じることが、親密さと深く関係していることが示されています。

つまり、「言わなくても分かってほしい」という気持ちの中には、「私が何をしてほしいかを当ててほしい」という願いだけでなく、「私のことを気にかけてほしい」という願いが含まれている場合があるのです。

「お願いすること」自体が負担になっている場合もある

もう一つ、見落とされやすい理由があります。

それは、相手にお願いすること自体が、負担になっているケースです。

たとえば、夫が妻に、

「家事は手伝うから、何でも言ってね。」

と言ったとします。

夫としては、協力する意思を示しているつもりです。

ところが、妻はこの言葉を聞いて、あまりうれしく感じないことがあります。

なぜなら、何をする必要があるのかを考える役割は、相変わらず妻の方にあるからです。

この「考える」という作業も、実は大きな心理的負担になっています。

アメリカの社会学者アリソン・ダミンジャーは、2019年の研究で、35組のカップルの70人にインタビューを行い、家庭内の「認知的労働(Cognitive Labor)」について調べました。

これは、実際に家事をする前の段階で、何が必要かを考えたり、計画を立てたり、進み具合を確認したりする、目に見えにくい仕事のことです。

この研究では、女性の方がこうした認知的労働を多く担っており、特に「必要なことを先回りして考える」「きちんと終わったか確認する」という役割に偏りが見られました。

たとえば、夫が子どもの保育園の準備を手伝ってくれたとしても、必要な物を把握して、何を準備するか指示を出し、最後に忘れ物がないか確認するのが妻であれば、妻の「認知的労働」の負担はかなり残っています。

この場合、妻が求めているのは、単に家事を手伝ってくれることではありません。

「何が必要なのかを、自分でも考えて動いてほしい。」

ということなのです。

こう考えると、「言わなくても分かってほしい」という言葉の意味も、少し違って聞こえてくるのではないでしょうか。

以前は言葉にしていたのに、伝わらなかった経験

もう一つ考えられるのが、過去のやり取りの影響です。

最初から「言わなくても分かってほしい」と思っていたわけではなく、以前は何度も言葉にしていたというケースです。

たとえば、妻が夫に、

「もう少し家事をしてほしい。」

と伝えたところ、夫が、

「分かった。今度からやるよ。」

と答えたとします。

ところが、しばらくすると元に戻ってしまう。

そのたびに妻がお願いすることを繰り返していると、だんだん伝えること自体が嫌になってきます。

「どうして毎回、私が言わなきゃいけないんだろう?」

そんな気持ちが積み重なった結果、「もう言いたくない。自分で気付いてほしい。」と感じるようになることがあります。

一方、夫の方は、以前に言われたことを忘れていたり、今は特に問題がないと思っていたりするかもしれません。

すると、妻が突然怒り出したように感じてしまうのです。

このように、同じ出来事でも、それまでに積み重ねてきた経験によって、受け取り方が大きく変わることがあります。

男性が「言ってくれないと分からない」と感じるのも自然なこと

ここまで女性側の心理を中心に考えてきましたが、男性側の気持ちにも目を向けてみたいと思います。

実際、「言ってくれないと分からない」というのも、もっともな意見です。

人は、どれだけ親しい相手であっても、相手の考えていることをすべて読み取れるわけではありません。

また、自分がしてほしいことと、相手がしてほしいことが同じとも限りません。

たとえば、自分は疲れている時に一人でゆっくり過ごしたいタイプだったとします。

その感覚で妻にも接すると、疲れていそうな時には、あえて声をかけずにそっとしておこうと考えるかもしれません。

ところが、妻は「疲れている時こそ、声をかけてほしい」と思っているかもしれないのです。

どちらが正しいという話ではなく、相手が何を望んでいるのかは、やはり言葉にしてもらわないと分からない部分があります。

ちなみに、心理学者ジャネット・ハイドは2005年に、46件のメタ分析を検討し、男女の心理的特徴は、多くの面で似ていることを報告しています。

「女性は察してほしい生き物で、男性は言葉にしないと分からない生き物」と決めつけてしまうと、目の前のパートナーの個性や、それまでの夫婦関係の影響を見落としかねません。

男性でも「言わなくても分かってほしい」と思うことはありますし、女性でも「ちゃんと言葉で伝えてほしい」と感じる人はいます。

「察してほしい」と「言ってほしい」をどう近づけるか

では、このすれ違いを減らすには、どうすればよいのでしょうか?

まず、「察してほしい」と言われた側は、何を分かってほしかったのかを聞いてみることが、一つの方法です。

「家事をしてほしかったの?それとも、疲れていることに気付いてほしかったの?」

この二つでは、必要な対応が違います。

もし後者であれば、単に家事の量を増やすだけでは、相手の不満が解消されないかもしれません。

また、「言ってくれたらやる」という姿勢から、「自分でも何が必要か考えてみる」という姿勢に変えてみることも役立つでしょう。

一方、「察してほしい」と思う側も、自分が何を期待しているのかを、できるだけ具体的に伝えてみることが必要です。

「いちいち頼むのが嫌なのは、家事を全部自分が管理している感じがするからなの。」

「疲れている時には、何か手伝おうかって声をかけてもらえるとうれしい。」

こんな伝え方なら、相手も自分に何ができるのかを考えやすくなります。

もちろん、何度も伝えているのに改善されない場合には、単に伝え方を変えるだけでは足りないこともあるでしょう。

その場合は、なぜ約束したことが続かないのか、夫婦で一緒に考える必要があります。

「言わなくても分かってほしい」という気持ちも、「言ってくれないと分からない」という気持ちも、どちらも理解できる部分があります。

ただ、お互いに自分の考えだけを正しいと思っていると、いつまでも同じことでケンカを繰り返してしまいます。

相手が言葉にしていないことにも少し目を向けてみる。

同時に、自分が望んでいることも、相手に伝えてみる。

まずは、そんなところから始めてみてもいいのではないでしょうか。

 

P.S.
夫婦関係がギクシャクした時には、自分ひとりで解決しようとして、孤独を感じてしまいがちです。
そんな時には、第三者の力を借りることも良い選択肢です。
あなたの夫婦関係に何が起きているのかを、男女両方の視点から客観的に分析し、解決策を一緒に探っていく「シンヤ&サヤの結婚生活再構築コンサルティング(オンライン)」を活用してみてください。お一人でも、夫婦2人でもご参加できます。結婚前のお悩み相談も歓迎します。↓↓↓

(※現在たくさんのお申し込みをいただいており、ひとりひとりにしっかり向き合うため、1ヶ月に受けられる数には限りがあります。ご希望の方はウェイティング登録をお願い致します。)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です