【仲が悪いわけではないのに、心の距離が離れていく夫婦】

 Fromシンヤ(男女のパートナーシップ研究所)

「別に、夫婦仲が悪いわけじゃないんです。」

夫婦関係について考える時、こんな言葉が出てくることがあります。

大きなケンカはしていないし、家事や育児も、それなりに協力できている。休日には一緒に出かけることもあるし、周りから見れば、普通に仲の良い夫婦に見えるかもしれません。

でも、どこか寂しい。

昔はもっと、何でも話せていた気がする。今は一緒に生活しているのに、相手が何を考えているのか、よく分からなくなっている。

こういう状態は、何か決定的な出来事がなくても、少しずつ起こることがあります。

会話はあるのに、気持ちを話していない

夫婦で毎日会話しているからといって、お互いの気持ちが伝わっているとは限りません。

「明日の保育園のお迎え、お願いできる?」

「週末、買い物どうする?」

「電気代、今月ちょっと高かったね。」

こういう会話は、生活を回すためには必要です。

ただ、そればかりになると、夫婦の会話が「家庭を運営するための連絡」に偏ってしまいます。

例えば、仕事で嫌なことがあった時に、本当はパートナーに聞いてほしいと思っていても、「疲れているだろうし、わざわざ話すほどのことでもないか」と飲み込む。

逆に、うれしいことがあっても、相手が忙しそうだから話さずに終わる。

こうしたことが続くと、毎日話しているのに、お互いの内面についてはあまり知らないという状態になりやすいのです。

#心の距離には「話した後の反応」も関係している

心理学では、親密さを考える時に「自己開示」と「相手の反応」が重視されます。

自己開示とは、自分の考えや気持ちを相手に伝えることです。

アメリカの心理学者ロランソーは、96組の夫婦に42日間、日々の会話や親密さについて記録してもらう研究を行いました。

その結果、自分や相手が気持ちを打ち明けることに加えて、「相手が自分の話を理解し、気にかけてくれていると感じられること」が、日々の親密さと関連していました。

ここで気になるのは、「話すこと自体がゴールではない」という点です。

例えば、「今日、職場でちょっと嫌なことがあってさ」と話した時に、「それは大変だったね」と聞いてもらえるのと、「そんなこと気にしなきゃいいじゃん」と返ってくるのとでは、受け取り方が変わるでしょう。

もちろん、後者も励まそうとして言っているのかもしれません。

でも、話した側が「分かってもらえなかった」と感じることが続けば、だんだん話す気持ちがなくなることもあります。

そうなると、相手には「最近、何も話してくれなくなった」と映るかもしれません。

ケンカを避けることが、距離を広げる場合もある

夫婦仲を悪くしたくないからこそ、言いたいことを言わない人もいます。

「これを言ったら、また面倒な空気になるかな。」

「別に、今さら言っても変わらないだろうし。」

その場で言い争いにならないので、表面的には平和です。

ただ、本人の中には小さな不満や寂しさが残っていることがあります。

そして、言わなくなった側は「相手が分かってくれない」と感じ、言われなくなった側は「特に問題はないんだろう」と思っている。

どちらかが悪意を持っているわけではなくても、ここにズレが生まれます。

そのうち、相手に何かを期待してがっかりするより、自分で済ませた方が楽だと感じるようになることもあります。

これは一見、夫婦それぞれが自立しているようにも見えます。

でも、「頼らなくても大丈夫」と「もう頼りたいと思わない」では、気持ちの面でかなり違いがあります。

うれしいことを共有できているか

もう一つ、見落とされやすいのが、良い出来事を共有する時間です。

アメリカの心理学の研究で、「うれしい出来事を人に話した時の反応」について調べたものがあります。

その研究では、

「パートナーが良いニュースに積極的で前向きな反応をする関係ほど、親密さや夫婦関係の満足度が高い傾向」

が見られました。

例えば、「今日、仕事で褒められたんだ」と話した時に、「へえ、よかったね」で会話が終わることもあります。

それ自体が悪いわけではありません。

ただ、「何を褒められたの?」と少し興味を持って聞いてもらえると、うれしい気持ちをもう少し共有できます。

夫婦関係というと、不満をどう伝えるか、ケンカをどう減らすかに目が向きがちですが、こうした何でもない会話も、意外と大きいのかもしれません。

心の距離を縮めるには、少しだけ会話の中身を変えてみる

心の距離が離れていると感じた時、いきなり「ちゃんと話し合おう」と切り出すと、相手が身構えてしまうこともあります。

話し合いが必要な問題もありますが、毎回深刻な話にする必要はないと思います。

例えば、今日あった出来事を報告する時に、「こういうことがあって、ちょっと落ち込んだんだよね」と、自分の気持ちも少し添えてみる。

相手が何かを話してくれたら、すぐにアドバイスをする前に、「それで、どう思ったの?」と聞いてみる。

そのくらいからでも、会話の雰囲気は変わるかもしれません。

ただし、一方が話しかけ続けなければならないという意味ではありません。

何度話しても否定されたり、傷つけられたりする関係なら、まずは安心して話せる状態を作る必要があります。

夫婦仲が悪くないのに、何となく遠い。

そんな時には、最近ケンカをしたかどうかだけでなく、「この人には自分の気持ちを話せる」と、お互いに感じられているかを振り返ってみるのもいいかもしれません。

 

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